外資系企業は、年齢や勤続年数よりも成果やスキルを重視する実力主義が特徴です。給与水準も高く、専門性の高い職種では1,000万円以上を狙えるケースも珍しくありません。
本記事では、外資系企業の年収を業界・職種・役職別で紹介します。
外資系企業の年収の特徴
外資系企業の年収の特徴について紹介します。
インセンティブが支給される成果主義
外資系企業の給与は、基本給とインセンティブの組み合わせが一般的です。基本給は年俸制がとられていることが多く、12等分されたものが毎月支給されます。役職が上がるごとに増えていきます。
インセンティブとは、目標達成や成果に応じて支払われる追加報酬のことです。月ごと・年4回・年2回など、企業や職種によって支給頻度は異なります。決められた額が支払われる日系企業のボーナスとは異なり、外資系企業では個人の業績が反映されるのが特徴です。年齢に関係なく、若くても成果を上げれば高収入を狙えます。
外資系企業の給与は年齢を基準にして決められるものではないものの、昇格していくには経験を積む時間が必要なため、結果的に年齢が年収を測る目安になることもあります。
直属上司の評価が重要
日系企業では人事部が人事権を取り持ちますが、外資系企業は直属の上司が人事権を持つ傾向があります。つまり、昇給や昇格のための評価を行うのは上司です。上司と日頃から信頼関係を築いていくことは、評価に直結します。上司が変わると評価基準も変わる可能性があり、その変化に柔軟に対応する必要があります。
外資系企業の年収が高い理由
外資系企業の年収が高い理由について紹介します。
資本力があるため
外資系企業は、グローバルに事業を展開する大手企業です。日本の物価は国際的に見ても伸びを続けており、人件費も安くはありません。その日本に進出できるほどの資本力や収益規模があることは、社員への報酬も上がる要因となります。
成果が給与に反映されるため
外資系企業では、年齢や勤続年数に関係なく成果が評価され、インセンティブが支払われます。企業によっては日系企業のボーナスよりも割合が高く、中には基本給とインセンティブの割合が5:5という事例もあります。結果を出せば、給与が大きく跳ね上がることも夢ではありません。
即戦力のある人材を採用するため
外資系企業では入社後に時間をかけて社員を育成するよりも、即戦力を採用する傾向があります。高度な専門スキルや豊富な経験を持つ優秀な人材の獲得のため、高めの給与を提示しているのです。日本貿易振興機構(ジェトロ)の「2024年度 外資系企業ビジネス実態調査」によると、外資系企業の34.7%の企業が人材不足の解決策として給与の引き上げを実施しています。
参考元:日本貿易振興機構(ジェトロ)|2024年度 外資系企業ビジネス実態調査
退職金がないため
外資系企業は成果主義で、人材を会社が育てるものではなく流動的な存在と捉える傾向があります。そのため、退職金制度を設けていない場合が多く見られます。定年退職時のほか、中途退職や会社都合での退職においても同様です。その代わり、給与が高く設定されているというわけです。企業によっては特別退職金制度や企業型確定拠出年金制度を採用しているところもあるので、転職の応募前に確認しておきましょう。
外資系企業の年収
最新の給与水準を見る
外資系企業の年収について業界・職種・年齢・役職j別で紹介します。ロバート・ハーフの年収ガイドでは、最新の給与水準から市場の動向まで、転職活動に役立つ情報が載っていますので、参考にしてください。
【業界別】外資系企業の年収
業界別では、特にテクノロジー(IT)と金融業界の年収が高くなっています。高レベルのスキルを持った人材確保が難しくなっているためと見られます。
業界
| 経験値が浅い場合
| 平均的な経験値の場合
| 優れた経験値がある場合
|
サプライチェーン
| 727万円
| 910万円
| 1,102万円
|
テクノロジー(IT)
| 1,208万円
| 1,561万円
| 1,981万円
|
人事(HR)
| 1,039万円
| 1,361万円
| 1,689万円
|
業務改革
| 957万円
| 1,196万円
| 1,429万円
|
経理・会計・財務
| 947万円
| 1,113万円
| 1,316万円
|
金融
| 1,422万円
| 1,668万円
| 1,972万円
|
【職種別】外資系企業の年収
次は職種別で外資系企業の年収を紹介します。こちらも「ロバート・ハーフの調査(2025年)」を参考にしています。
テクノロジー(IT)
テクノロジー(IT)分野では、特にセキュリティ分野のリーダーの年収が飛びぬけています。サイバーセキュリティのほか、クラウドやAI、デジタルトランスフォーメーションの需要も高まっていくと見られます。
職種名
| 経験値が浅い場合
| 平均的な経験値の場合
| 優れた経験値がある場合
|
バックエンドエンジニア
| 750万円
| 1,050万円
| 1,250万円
|
クラウドエンジニア/アーキテクト
| 630万円
| 830万円
| 1,250万円
|
DevOps/SREエンジニア
| 750万円
| 950万円
| 1,250万円
|
フロントエンドエンジニア
| 650万円
| 850万円
| 1,050万円
|
機械学習/NLP/AIエンジニア
| 650万円
| 1,050万円
| 1,350万円
|
QAエンジニア/テスター
| 500万円
| 700万円
| 900万円
|
セキュリティ テックリード/情報セキュリティマネージャー
| 1,500万円
| 1,800万円
| 2,100万円
|
データエンジニア/アーキテクト
| 650万円
| 900万円
| 1,200万円
|
経理・会計・財務
経理・会計・財務分野では、経験だけでなくマネージャーのような役職によっても年収が大きく左右されます。英語力としては、ライティングスキルが特に求められます。
職種名
| 経験値が浅い場合
| 平均的な経験値の場合
| 優れた経験値がある場合
|
アカウンタント(大企業)
| 600万円
| 750万円
| 800万円
|
アカウンティングマネージャー(大企業)
| 900万円
| 1,100万円
| 1,300万円
|
ファイナンスマネージャー(大企業)
| 1,300万円
| 1,500万円
| 2,000万円
|
税務スタッフ(大企業)
| 700万円
| 800万円
| 900万円
|
税務マネージャー/ディレクター(大企業)
| 1,300万円
| 1,500万円
| 2,000万円
|
トレジャラー/トレジャリーアカウンタント(大企業)
| 650万円
| 750万円
| 800万円
|
金融サービス
金融サービス分野では役職による差が大きく、特にディレクターのような上級管理職は他の役職の2倍ほどにもなります。内部監査やコンプライアンス業務の需要が高く、国際的な規制対応に精通した人材が求められています。
職種名
| 経験値が浅い場合
| 平均的な経験値の場合
| 優れた経験値がある場合
|
コンプライアンスアソシエイト/マネージャー/AVP
| 850万円
| 950万円
| 1,150万円
|
コンプライアンスSVP/ディレクター
| 1,900万円
| 2,100万円
| 2,500万円
|
ファイナンシャルコントロール アナリスト
| 650万円
| 750万円
| 800万円
|
ファイナンシャルコントロール アソシエイト/マネージャー/AVP
| 850万円
| 1,100万円
| 1,350万円
|
ファイナンシャルコントロール SVP/ディレクター
| 1,900万円
| 2,150万円
| 2,450万円
|
内部監査アソシエイト/マネージャー/AVP (金融サービス)
| 900万円
| 950万円
| 1,150万円
|
税務SVP/ディレクター
| 1,900万円
| 2,000万円
| 2,150万円
|
業務改革
業務改革分野では、SAPやERPなど基幹システムの導入経験やAI活用スキルを持つ人材の需要が高いです。高度な技術力に加え、言語力や異文化理解などを基盤としたビジネススキルも不可欠です。
職種名
| 経験値が浅い場合
| 平均的な経験値の場合
| 優れた経験値がある場合
|
ビジネスアナリスト
| 650万円
| 850万円
| 1,050万円
|
アーキテクト(アプリケーション、ソリューション、システム、インフラ、エンタープライズ)
| 1,050万円
| 1,400万円
| 1,800万円
|
ITディレクター/最高情報責任者(CIO)/最高技術責任者(CTO)
| 1,600万円
| 2,200万円
| 2,600万円
|
プロジェクトマネージャー/シニアプロジェクトマネージャー
| 1,050万円
| 1,250万円
| 1,450万円
|
人事(HR)
人事(HR)分野では社会全体の労働力不足を背景に、ダイバーシティやエクイティといった考え方が重宝されるようになってきています。視野を広く持ち、有能な人材を見抜くスキルが必要です。
職種名
| 経験値が浅い場合
| 平均的な経験値の場合
| 優れた経験値がある場合
|
HRディレクター
| 1,600万円
| 2,200万円
| 3,000万円
|
シニア HRビジネスパートナー
| 1,400万円
| 1,600万円
| 2,000万円
|
HRビジネスパートナー
| 800万円
| 1,200万円
| 1,400万円
|
リクルーター
| 600万円
| 900万円
| 1,100万円
|
タレントマネジメント/組織開発
| 1,000万円
| 1,400万円
| 1,800万円
|
サプライチェーン
サプライチェーン分野では業務効率化が重視されるようになり、DXやITを活用できる人材の需要が高まっています。売上につながる業務のため、経営面からの視点も必要です。
職種名
| 経験値が浅い場合
| 平均的な経験値の場合
| 優れた経験値がある場合
|
直接購買スタッフ
| 500万円
| 700万円
| 900万円
|
直接購買マネージャー
| 800万円
| 1,000万円
| 1,200万円
|
物流プランナー
| 500万円
| 700万円
| 900万円
|
物流管理マネージャー
| 800万円
| 1,000万円
| 1,200万円
|
需要予測プランナー/供給計画プランナー
| 600万円
| 700万円
| 900万円
|
サプライチェーンマネージャー
| 1,000万円
| 1,200万円
| 1,300万円
|
【役職別】外資系企業の年収
マーサージャパン株式会社の「日本総報酬サーベイ2024年度」によると、外資系企業の役職別の平均年収は以下の通りです。
外資系企業も日系企業と同様に、役職が上がるほど年収は増えていきます。特に課長クラスへ昇格すると大幅な年収アップが見込めるでしょう。
参考元:マーサージャパン株式会社|日本総報酬サーベイ2024年度
役職
| 平均年収
|
入社1〜3年目
| 527万円
|
入社3〜5年目
| 669万円
|
課長クラス
| 1,438万円
|
部長クラス
| 1,982万円
|
経営幹部クラス
| 3,761万円
|
外資系企業で年収を上げるには?
外資系企業で年収を上げる方法について具体的に説明します。
成果を出す
外資系企業では成果主義を採用している企業が多く、年齢や勤続年数よりも日々の業務でどれだけ成果を生み出したかが評価の基準になります。チームワークも重要なため、周囲と協力しながら目標達成に向けて行動することで、大きな成果が生まれます。特に、チームの中でリーダーシップやマネジメント力を発揮できれば、評価はさらに高まるでしょう。
英語力を上げる
外資系企業で活躍するためには英語力が必要です。英語力を高めればプロジェクトへ関与する範囲も広くなり、成果を出す機会が増えます。また昇格するにつれ、多国籍のチームメンバーをまとめたり、海外の顧客とリレーションシップ構築したりと、英語でのやり取りが多く発生します。業務や職種によって求められる英語レベルは変わりますが、昇格による年収アップを目指す場合は、高レベルの会話力が必要でしょう。
関連記事:外資系企業で必要な英語力は?業界・職種別の目安、転職対策を解説
年収交渉を行う
日本では給与交渉はあまり行われませんが、欧米諸国や中国では積極的に行われています。そのため、外資系企業でも年収交渉は一般的なことです。人事評価の面談時や大きな目標を達成したときなどが、話を切り出すタイミングです。交渉時には目標の達成率や市場の給与相場など、具体的な数字を提示すると説得力が出て、企業側も前向きに検討しやすくなります。
関連記事:給与交渉で年収アップを実現。進め方や金額目安、ポイントを詳しく解説
より待遇の良い企業へ転職する
企業によって待遇は異なるため、転職も年収アップのための一つの方法です。外資系企業ではキャリアアップのために転職することはめずらしくありません。企業側も優秀な人材を得るために、好条件を出すところもあります。求人情報などで志望業界で求められているスキルを確認し、自身のスキルと照らし合せながら転職するタイミングを計ることも大切です。
関連記事:【例文付き】希望年収の答え方は?注意点や金額の決め方、交渉のコツ
英語力や専門スキル、実務経験を磨く
外資系企業では、即戦力として活躍できる人材が高く評価されます。そのため、英語力や専門スキル、実務経験を事前にしっかりと磨いておくことが欠かせません。資格を提示したり、成果を出した経験があれば具体的な数字を用いて説明したりするのもよいでしょう。英語力は業務内容によっては必須ではありませんが、マネジメントポジションを目指す場合は、高めておくことをおすすめします。
外資系企業に強い転職エージェントを活用する
転職のご相談はこちら
外資系企業へ転職するには、外資系に特化した転職エージェントを活用するのがおすすめです。エージェントは各企業の採用背景や職場の雰囲気なども把握しているため、企業研究がスムーズに進み、自身に合った職場を具体的にイメージすることができます。応募書類の添削や面接対策のほか、給与や条件交渉の代理も依頼可能で、納得のいく転職ができるでしょう。
外資系企業の年収に関するよくある質問
外資系企業の年収に関するよくある質問を紹介します。
外資系企業では年収はどのように決まりますか?
外資系企業の年収は、職種や役職、そして個々の成果やパフォーマンスによって決まります。多くの外資系企業は実力主義を採用しており、成果を出す出さないかがインセンティブや昇格に直結します。年収を決めるのは、人事権を持つ直属の上司です。年次査定において上司どうしが議論を交わしたうえでの決定となるため、直属の上司の力量によっても年収は左右されるといえます。
転職で外資系企業に入ると年収は上がりますか?
会社にもよりますが、一般的に外資系企業の給与水準は、日系企業よりも高い傾向があります。自分が持っている経験やスキルが応募先企業の求める条件と合致すれば、転職によって年収アップするのも夢ではないでしょう。外資系企業は給与交渉の余地も大きいため、自分の市場価値を把握し、過去の実績を具体的な数値で提示することで有利に進められます。
外資系企業で高年収を狙うにはどのような職種がおすすめですか?
外資系企業で高年収を狙うなら、専門性の高い職種がおすすめです。たとえば、ITエンジニアやデータサイエンティストなどは、役職が上がらなくても経験を積めば高収入になります。また、コンプライアンスやマーケットリスクなど金融関連の職種は、役職による差が大きいことが特徴です。いずれにしても実力勝負といえるでしょう。
ロバート・ハーフの年収ガイドでは、最新の給与相場や市場動向など転職に役立つを紹介しています。ぜひ参考にしてください。
まとめ
転職のご相談はこちら
外資系企業は、業界・役職・個人の成果などによって年収が左右されます。年功序列ではないため、若手でも成果を上げれば高年収が狙えます。転職の際には外資系企業に強い転職エージェントを活用すると、外資系の特徴や自分のスキルとの相性が見え、段取りもスムーズになるでしょう。
ロバート・ハーフは、外資系・日系グローバル企業への転職支援に特化した転職エージェンです。外資系企業への転職を検討されている方は、ぜひご利用ください。
■アドバイザー
安西 力哉 | ビジネスリレーションシップマネージャー
約5年間の投資銀行での実務経験を経て、金融領域に特化したリクルーターとしてキャリアを築き、現在はロバート・ハーフのストラテジックアカウントチームに所属。人材業界で7年以上の経験を有し、クライアントと社内チームの橋渡し役として、採用課題のヒアリングから最適な人材ソリューションの提案までを一貫して担っている。
人生の半分をカリフォルニア、半分を日本で過ごした経験から、日英のバイリンガルとして両文化を深く理解し、国内外のクライアントの多様なニーズに応える、きめ細やかなサービスを提供している。
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