企業を取り巻く環境は年々複雑になり、経営には高度な専門性が求められています。その中で注目されているのが、各分野の責任者を明確にする「CxO」という役職です。財務・技術・人事などの領域ごとに専門家を配置することで、意思決定の質を高めたり、変化の早い市場に柔軟に対応したりしやすくなります。
本記事では、代表的なCxOの種類や役割、採用方法について解説します。
CxO(シーエックスオー)とは?
CxOとは、「Chief × Officer」の略称で、企業の特定分野を統括する最高責任者を指す言葉です。たとえば、CEOなら最高経営責任者、CTOなら最高技術責任者というように、それぞれの専門分野に応じて役割が設定されています。
もともとは欧米企業で一般的に使われていた役職ですが、近年では外資系企業やスタートアップを中心に日本でも導入が広がっています。
CxOと従来の役職(取締役・執行役員)の違い
CxOと従来の役職の大きな違いは、法律で役割が規定されているかどうかです。代表取締役や取締役については、会社法で役割や権限が規定されており、企業を代表する権限や業務執行に関する法的責任が明確に示されています。
一方で、CEOやCOOなどのCxOについては、法律上の定義がなく、企業ごとに担当範囲や権限の広さが設計される仕組みです。ただし、経営方針を決定したり事業運営を統括したりするという点は共通しています。
経営におけるCxOの役割
取締役や執行役員、そしてCxOはいずれも企業の戦略的な意思決定に関与する立場です。その中でも、CxOは財務・技術・人事・情報などの領域に精通しているのが特徴で、経営課題に対して専門的な観点から助言する役割を担います。
また、CxOは取締役や執行役員と比べて現場との距離が近く、経営層と現場をつなぐ存在としても機能します。担当領域の状況を踏まえて戦略の実行を支え、全社を同じ方向に導くことも役割の一つです。
企業でCxOの導入が進んでいる背景
企業でCxOを採用する動きが広がっているのは、経営環境がこれまで以上に複雑になっているためです。以前は代表取締役社長が複数の領域を抱え込み、財務や技術なども兼務するケースが一般的でした。
しかし、顧客ニーズの多様化や社会の急速な変化により、経営者がすべての分野を一人で管理することは難しくなっています。担当範囲が広がりすぎると、十分な判断や本来専念すべき業務に割く時間が確保できなくなります。
本来の経営判断に集中するためにも、財務・技術・人事などの専門家を配置し、課題に応じて高度な知見を取り入れることが必要です。また、意思決定の精度とスピードを高める観点からも、CxOの役割は重要性が高まっています。
CxOの役職一覧(17種類)
CxOには、企業の主要分野を担当するさまざまな役職があります。代表的な17種類のCxOについて紹介します。
CEO(最高経営責任者)
CEOとは、「Chief Executive Officer」の略語であり、最高経営責任者を意味します。会社全体の方向性を定め、事業戦略や組織運営を統括する役職です。
具体的には、経営理念や中長期の事業戦略の策定、業務執行の統括などを担当します。また、株主・投資家・取引先・社員など多様なステークホルダーに向けて説明や情報発信を行い、企業として透明性や信頼性を高める役割も求められます。
関連記事:CEOとは?社長・代表取締役・COOとの違いや役割、キャリアパスを解説
COO(最高執行責任者)
COOとは、「Chief Operating Officer」の略語であり、最高執行責任者を意味します。経営陣が定めた方針を現場で実行に移し、日々の事業運営を統括する役職です。
具体的には、CEOの判断をもとに業務体制を整え、組織運営や人材マネジメントを進める立場です。各部門の動きを調整しながら、経営層と現場の情報連携を円滑にする役割も担います。
関連記事:COO(最高執行責任者)とは?CEOとの違いや役割、仕事内容を解説
CFO(最高財務責任者)
CFOとは、「Chief Financial Officer」の略語であり、最高財務責任者を意味します。企業全体の財務戦略を立て、その実行を統括することで、経営判断を財務面から支える役職です。
具体的には、資金調達や資金管理、財務戦略の策定と実行、予算編成やコスト管理などを担当します。また、投資家や株主に向けて企業の財務状況や将来の見通しを適切に説明し、企業の信頼性を高める役割も担います。
関連記事:CFO(最高財務責任者)とは?役割や年収、CEO・CTOとの違いや採用方法
CTO(最高技術責任者)
CTOとは、「Chief Technology Officer」の略語であり、最高技術責任者を意味します。企業の技術領域を統括し、技術開発の方向性を示す役職です。
具体的には、技術戦略の策定と推進、開発組織の体制づくりやエンジニアチームの統括、最新技術の導入方針の検討などを担当します。また、事業計画や財務方針との整合性を保つために、CEO・CFO・COOなどと定期的に情報を共有し、企業全体の成長を技術面から支える立場です。
関連記事:CTO(最高技術責任者)とは?役割や業務、CEO・CIOとの違いを解説
CIO(最高情報責任者)
CIOとは、「Chief Information Officer」の略語であり、最高情報責任者を意味します。企業の情報システム全般を統括し、IT戦略の方向性を定める役職です。
具体的には、情報システムの企画や運用管理、ITインフラの整備、データ管理や業務効率化に向けた取り組みなどを担当します。サイバー攻撃への備えや情報セキュリティの強化も重要な任務であり、企業の情報資産を守る役割を果たします。
CISO(最高情報セキュリティ責任者)
CISOとは、「Chief Information Security Officer」の略語であり、最高情報セキュリティ責任者を意味します。企業の情報資産を守るため、セキュリティ全体の方針を策定し、リスク管理を統括する役職です。
具体的には、情報セキュリティ戦略の立案、サイバー攻撃への対策、社内のセキュリティ体制の整備、インシデント発生時の対応などを担当します。デジタル技術の活用が進む中で情報リスクは増大しており、CISOは企業の信頼性を維持するために欠かせない存在です。
CAO(最高分析責任者)
CAOとは、「Chief Analytics Officer」の略語であり、最高分析責任者を意味します。企業が保有するデータを活用し、経営判断や事業戦略に役立つ示唆を導き出す役職です。
具体的には、データ分析基盤の構築、分析モデルの設計、事業データの可視化やレポート作成、各部門への分析支援などを担当します。マーケティングや営業、生産など多様な領域と連携し、データにもとづいた意思決定を促すのが特徴です。
なお、企業によっては「Chief Administrative Officer(最高管理責任者/最高総務責任者)」や「Chief Accounting Officer(最高会計責任者)」を指す場合もあります。
CDO(最高デジタル責任者)
CDOとは、「Chief Digital Officer」の略語であり、最高デジタル責任者を意味します。企業のデジタル戦略を統括し、デジタル技術を活用した事業変革を推進する役職です。
具体的には、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進、デジタル施策の企画と実行、データ活用やシステム改善の指揮などを担当します。部門を横断してデジタル化を進め、事業の成長につながる基盤づくりを行う存在です。
なお、企業によっては「Chief Data Officer(最高データ責任者)」を指す場合もあります。
CMO(最高マーケティング責任者)
CMOとは、「Chief Marketing Officer」の略語であり、最高マーケティング責任者を意味します。企業全体のマーケティング戦略を統括し、ブランド価値の向上や顧客獲得の拡大を推進する役職です。
具体的には、マーケティング施策の企画と実行、顧客分析や市場調査、広告・プロモーションの管理、ブランド戦略の立案などを担当します。営業や商品開発部門と連携しながら、顧客ニーズに合った価値提供を行うことが求められます。
CSO(最高戦略責任者)
CSOとは、「Chief Strategy Officer」の略語であり、最高戦略責任者を意味します。企業全体の戦略を統括し、中長期的な方向性を定める役職です。
具体的には、市場分析や競合調査にもとづく経営戦略の立案、新規事業の検討、組織全体の戦略調整などを担当します。経営陣と連携しながら企業の将来像を描き、実行計画に落とし込み、持続的な成長につながる体制づくりを進める立場です。
なお、企業によっては CSOが「Chief Social Officer(最高ソーシャル責任者)」や「Chief Sustainability Officer(最高サステナビリティ責任者)」を指す場合もあります。
CHRO(最高人事責任者)
CHROとは、「Chief Human Resources Officer」の略語であり、最高人事責任者を意味します。人事戦略の立案から組織づくりまで、人材に関わる領域を統括する役職です。
具体的には、採用計画の策定、人材の育成・評価に関する制度の設計、従業員エンゲージメント向上施策などを担当します。近年は、働き方改革やダイバーシティの推進が企業課題として重要性を増しています。
CCO(最高コミュニケーション責任者)
CCOとは、「Chief Communication Officer」の略語であり、最高コミュニケーション責任者を意味します。企業の対内・対外コミュニケーションを統括し、情報発信の一貫性と信頼性を高める役職です。
具体的には、広報戦略の立案、メディア対応、社内コミュニケーションの整備、危機管理などを担当します。企業ブランドのイメージ向上やステークホルダーとの良好な関係構築を支えます。
CPO(最高プライバシー管理責任者)
CPOとは、「Chief Privacy Officer」の略語であり、最高プライバシー管理責任者を意味します。個人情報や顧客データを適切に扱い、企業のプライバシー保護体制を整備する役職です。
具体的には、個人情報保護に関する方針の策定、データ管理ルールの整備、法令遵守のチェック、社内教育などを担当します。データ活用が進む現代において、安心してサービスを利用できる環境を整える重要な存在です。
CLO(最高法務責任者)
CLOとは、「Chief Legal Officer」の略語であり、最高法務責任者を意味します。企業活動に関わる法務リスクを管理し、コーポレートガバナンスの強化を図る役職です。
具体的には、契約書の確認・作成、訴訟やトラブル対応、リスクマネジメントなどを担当し、経営陣に法的な観点から助言を行います。近年は企業のグローバル展開が進んでおり、海外法規制への対応やコンプライアンス強化の必要性が高まっていることから、CLOの重要性はさらに増しています。
CVO(最高ビジョナリー責任者)
CVOとは、「Chief Visionary Officer」の略語であり、最高ビジョナリー責任者/最高事業計画責任者を意味します。企業の長期的な方向性やビジョンを示し、未来に向けて事業を導く役職です。
具体的には、将来の市場動向や技術革新を踏まえた事業構想の策定、新規領域の探索、企業文化の醸成などを担当します。変化のスピードが速い現代では、企業が持続的に成長し続けるために先を見通した戦略づくりが求められており、CVOの重要性が高まっています。
CGO(最高事業成長責任者)
CGOとは、「Chief Growth Officer」の略語であり、最高事業成長責任者を意味します。長期的なビジョンと成長戦略を描き、企業の事業拡大を主導する役職です。
具体的には、市場拡大や新製品開発、顧客獲得からリテンションまでを一貫して見渡し、成長に必要な施策を統合的に設計します。近年では、CMOを廃止し、領域をより明確にしたCGOを設置する企業も増えており、急速に変化する市場環境に対応するための重要なポジションとして注目されています。
CxOを設置する目的とメリット
CxOを設置する目的とメリットについて、具体的に説明します。
経営と現場の連携強化
経営層が会社の方針を決めるうえでは、現場の状況や意見を踏まえた判断が欠かせません。特定分野に精通したCxOが現場の動きを把握したうえで経営陣に情報を共有することで、課題整理や改善策の検討が進みやすくなります。また、経営方針を現場に反映するときも、CxOが橋渡し役となることで混乱を避け、組織全体の理解がそろいやすくなります。
各分野の専門家による事業推進と意思決定の迅速
CxOを配置するメリットは、専門領域に特化した視点を経営に取り入れることができる点です。財務や技術、人事などの分野ごとに責任者を置くことで、状況を把握した的確な助言をもらえるため、意思決定のスピードが向上します。また、市場の変化にも柔軟に対応しやすくなり、企業としての競争力強化にも寄与します。
役割・責任範囲の明確化
CxOを配置すると、各分野の責任者が明確になり、組織内での役割分担が把握しやすくなります。担当領域がはっきりすることで、CxOは自身の専門性や経験を最大限に活かしやすくなり、管轄分野の業務を的確かつ効率的に進められることがメリットの一つです。
経営と執行を分担し効率化
CxOを配置することで、経営陣が担うべき意思決定と、現場で進める業務執行を分けて整理しやすくなります。経営層は全社的な方向性の判断に集中でき、CxOは担当領域の運営や改善に専念できるため、双方の負担を抑えながら効率的に組織を動かすことができる点がメリットです。
CxO人材に求められるスキルと資質
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CxOは企業の重要な意思決定に関わる立場にあり、高度な専門性と経営視点の両方が求められます。担当領域の知識だけでなく、組織を動かすための判断力やコミュニケーション力も欠かせません。CxO人材に求められるスキルと資質について紹介します。
経営判断力・戦略思考
CxOは各分野の最高責任者である以上、専門知識を持っているだけでは不十分で、経営全体を見渡す視点を持つことが欠かせません。短期的な成果にとらわれず、中長期の成長を見据えて戦略を描く思考力が重要になります。
さらに、事業環境が厳しい場面でも状況を切り開く判断が求められます。必要に応じてリスクを取る決断力を発揮し、企業が進むべき方向を示すことがCxOの大きな役割です。
専門領域の知識
現代のビジネス環境はかつてより複雑になっており、企業が生き残るためには専門性の高さが欠かせません。
競合他社もそれぞれの分野で能力を強化しているため、CxOには深い知識と実務経験が必要になります。たとえば、CTOであれば技術トレンドの把握だけでなく、開発プロセスやアーキテクチャに関する理解が不可欠です。
リーダーシップと組織マネジメント力
CxOは専門知識を持っているだけでは十分に役割を果たすことができず、経営陣が示す方針に沿って組織を導くリーダーシップが欠かせません。トップダウンで指示を出すだけでなく、現場との信頼関係を築きながらチームを動かす姿勢が求められます。
具体的には、チームの育成や役割分担の最適化、部門間の調整などを行い、組織が成果を出しやすい環境を整えることが役割です。また、メンバーの意見に耳を傾けつつ方向性を示し、部門の目標達成に向けてまとめ上げるマネジメント力も必要になります。
コミュニケーション力
CxOには、経営層と現場をつなぐ立場において、状況に応じたコミュニケーション力が求められます。経営陣には専門的な内容を分かりやすく伝え、現場には方針の背景や意図を正確に説明するなど、相手に合わせて情報を整理する力が欠かせません。
また、部門を横断して協力を得る場面も多いため、関係者との調整や合意形成を進めるスキルも重要です。誤解なく情報を共有し、組織全体を同じ方向に導くために、円滑なコミュニケーション力は不可欠な資質と言えます。
変革推進力・適応能力
CxOは、急速に変化する市場や技術動向に対応しながら、組織を前へ進める役割を担います。そのため、現状を維持するのではなく、課題を見つけて改善に導く変革推進力が欠かせません。必要であれば既存の仕組みを見直し、新しい方法を取り入れる柔軟さも求められます。
また、社会情勢や業界のトレンドが大きく変わる中で、その変化に素早く適応できる力も重要です。想定外の状況でも冷静に判断し、組織を次のステージに導く姿勢が問われます。変化を恐れず挑戦できる姿勢こそ、CxOに求められる重要な資質です。
倫理観・誠実さ
CxOは企業の中核を担う立場にあるため、高い倫理観と誠実さが求められます。不正やごまかしを排除し、公正な判断を下す姿勢がなければ、社内外からの信頼を得ることができません。どれだけ優れた戦略を描けても、信頼を損なえば組織は前へ進めなくなります。
また、ステークホルダーの利益や社会的な影響を踏まえた判断も欠かせません。企業の透明性や説明責任が強く求められる時代だからこそ、倫理に基づいた行動がCxOの重要な資質になります。
CxO人材の採用プロセス
CxOは企業の成長を左右する重要な役職であるため、採用には慎重な検討が必要です。担当領域に求められる専門性だけでなく、経営視点や組織を率いる力など、多角的な観点で候補者を評価することが欠かせません。CxO人材を選定し採用する際のプロセスを紹介します。
企業に必要なCxOポジションの検討
CxOを採用する際は、まず自社にどの領域の責任者が必要なのかを明確にすることが重要です。課題の所在や今後の事業方針を踏まえ、どの分野の専門性を補強する必要があるのかを整理します。たとえば、デジタル化を進めたい企業であればCDO、事業拡大を目指す場合はCGOが該当するなど、目的に応じて求めるポジションが変わります。
候補者の選定基準と求人要件を確定
必要なCxOポジションが明確になったら、次に候補者に求める基準や求人要件を具体化します。担当領域に必要な専門性だけでなく、経営視点やリーダーシップ、組織を動かす力など、CxOに不可欠な資質を整理することが大切です。
事業計画や組織課題を踏まえたうえで、どのような経験を持つ人物が最適なのかを言語化することで、選考の判断軸がぶれにくくなります。
社内から選定する場合
社内からCxO候補を選ぶ場合は、自社の状況や人材構成を踏まえたうえで、適任者を段階的に絞り込みます。まず、各部門の実績やマネジメント経験をもとに候補者をリストアップし、必要な資質を備えているかを確認しましょう。
その後、経営陣との面談を行い、経営視点や組織運営に対する考え方を慎重に見極めます。最終的に、事業方針との適合度やリーダーシップを総合的に判断し、CxOとして任命する流れです。
外部から採用する場合
外部からCxOを迎える場合は、専門性や経験を持つ人材を確実に見つけるために、計画的な採用プロセスが重要です。まず、エグゼクティブサーチ会社と打ち合わせを行い、自社が求める人物像や役割を共有します。
その内容をもとにターゲットリストを作成し、適任者にアプローチを開始します。候補者との面談で適性を確認し、双方の条件が整えば、最終的にオファーを提示するという流れです。
関連記事:エグゼクティブサーチとは?採用の流れや注意点、費用などの基本を解説
CxO採用を成功させるためのポイント
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CxOの採用は企業の将来を左右する重要な取り組みです。高度な専門性に加え、経営視点や組織との相性も求められるため、選考には慎重な判断が必要になります。CxO採用を成功に導くために押さえておきたいポイントを紹介します。
経営課題や事業戦略を明確にする
CxOを採用する際は、まず自社が抱える経営課題と中長期の事業戦略をはっきりさせることが欠かせません。財務基盤を強化したいのか、デジタル化を進めたいのか、あるいは海外展開を見据えているのかなど、重点領域を具体化することで求める人材像が明確になります。
こうした方向性が曖昧なまま採用を進めると、期待とのギャップが生まれやすく、CxOが十分に力を発揮できない可能性があります。採用成功のためには、事業戦略と経営課題を丁寧に整理したうえで、役割への期待値を明確にしておくことが重要です。
社風・カルチャーフィットを確認する
CxOは経営の中心に立つ役職であり、スキルや実績だけではなく、社風やカルチャーとの相性も重要な判断材料になります。経営陣やチームと価値観が合わない場合、意思疎通が難しくなり、改革を進める力が弱まるおそれがあります。
そのため、採用段階では理念や文化への共感度を丁寧に見極めることが大切です。面談やディスカッションを通じて価値観の一致度を確認することで、入社後のミスマッチを防ぎ、それがスムーズな組織運営につながります。
候補者のリファレンスチェックを徹底する
CxOは企業経営に影響する重要な判断を担うため、候補者の実績やリーダーシップの特徴を多面的に確認することが欠かせません。履歴書や面接だけでは見えにくい部分も多いため、過去に関わった上司・部下・取引先からの評価を確認するリファレンスチェックが有効です。
第三者の視点を取り入れることで、実績の信頼性や行動特性をより正確に把握できます。特に経営層の採用では、再現性のある成果を出してきたかどうかを丁寧に検証することで、採用リスクを大きく抑えられます。
報酬設計やインセンティブ制度を工夫する
CxOクラスの人材は市場価値が高く、企業間での採用競争も激しくなっています。そのため、固定報酬だけでなく、成果に応じて評価されるインセンティブ制度やストックオプションなど、モチベーションを高める仕組みを整えることが重要です。
また、報酬体系の透明性や公平性を保つことも欠かせません。企業の成長に寄与した分だけ適切に報われる制度を設計することで、優秀なCxOを惹きつけやすくなり、長期的な定着にもつながります。
エグゼクティブサーチ会社を活用する
CxOクラスの人材には、自社のネットワークだけでは出会いにくいケースが多く、採用難度が高いのが実情です。エグゼクティブサーチ会社を利用すると、非公開で転職活動している人材や他社の経営層など、通常は接点を持ちにくい候補者にアプローチできます。
また、採用要件の整理から候補者の評価、条件交渉まで一連のプロセスを専門家が支援してくれるため、採用活動の負担を軽減しやすくなります。高度な専門性を持つCxO候補を確実に見つけるうえで、有効な手段となるアプローチです。
入社後のオンボーディングを重視する
CxOは就任直後から重要な経営課題に関わるため、早期に実力を発揮できる環境を整えることが欠かせません。そのためには、組織にスムーズに馴染めるよう支援するオンボーディングが重要な役割を果たします。
具体的には、主要メンバーとのミーティングを設定して関係構築を促したり、必要な情報を共有する場を整えたりすることで、新任CxOが担当領域を速やかに把握しやすくなります。
また、経営陣との定期的な対話を通じて、組織文化への理解を深めてもらうことも効果的です。こうした取り組みにより、着任後の立ち上がりが滑らかになり、CxOが持つ知見を早期に発揮できる体制が整います。
ロバートハーフのエグゼクティブサーチ
ロバートハーフは、エグゼクティブ層の採用支援で高い評価を得ているサーチファームです。サーチ成功率は97%と業界平均を大きく上回り、これまでに4,500件以上のプロジェクトに対応してきた実績があります。
採用スピードの速さも強みで、一般的に1年かかることもあるエグゼクティブ採用を、同社では平均90日未満で完了するケースが多いのが特徴です。精度の高い要件定義とスクリーニングにより、短期間で最適な候補者を見極めやすい体制が整っています。
また、専任コンサルタントが全工程を一貫して担当するため、情報伝達のロスが少なく、スムーズな進行が可能です。AIを活用した独自データベースと幅広いネットワークを活かし、優秀な候補者を効率的に発掘できる点も大きな強みと言えます。
よくある質問
CxOに関するよくある質問を紹介します。
CxOと社長・会長の違いは?
社長・会長は企業全体のトップとして経営を指揮する役職であり、CxOは特定領域に特化して経営を支える責任者という点が大きな違いです。
社長や会長は企業全体を統括する立場にあり、会社の方向性を最終的に決定する経営トップです。法律上の権限そのものは「代表取締役」や「取締役」などの法的役職に紐づきますが、一般的に社長は企業を代表し、会長は取締役会の運営や経営方針の監督を担います。
一方、CxOは財務・技術・人事など特定の分野に責任を持つ専門役職で、担当領域における戦略立案や実務の統括を担います。企業全体を代表する立場にあるのではなく、専門性を軸に経営に貢献するのが特徴です。
CxOと事業部長の違いは?
事業部長は自分が管轄する事業部の売上・利益・組織運営に責任を持つ役職です。事業部の目標達成に向けて、日々の運営管理やメンバー育成を行うなど、より現場寄りの役割を担います。前述の通り、CxOは企業全体の経営に関わる立場にあり、財務・技術・人事など特定分野の戦略と組織横断の取り組みを統括する役職です。
スタートアップ企業と大企業でCxOに求められる役割は異なる?
スタートアップでは、人員や仕組みが整っていないことが多く、CxOが複数の業務を横断的に担う傾向があります。CTOが開発とプロダクト設計を兼ねたり、CFOが資金調達からバックオフィスまで対応したりと、実務と意思決定を両方引き受ける場面も珍しくありません。
一方、大企業では役割分担が明確で、CxOは担当領域の戦略づくりや全社的な調整を中心に担います。取締役や執行役員を兼ねるケースもあり、制度に基づいた統制やガバナンスのもとで動くのが特徴です。
中小企業にもCXOは必要?
中小企業でも、事業の高度化やデジタル化が進む中で、CxOを設置するメリットは十分にあります。CFOやCTO、CMOなど専門分野の責任者を置くことで、経営者が一人で抱えている判断業務を分散し、意思決定の質を高めやすくなります。
とはいえ、フルタイムでCxOを採用するのが難しい場合も少なくありません。そのようなときは、パートタイムで役割を担うフラクショナルCxOや、外部顧問として専門家を迎える方法も有効です。
CxOのポジションを導入する際の注意点は?
CxOを新設する際は、そのポジションがなぜ必要なのかを明確にすることが欠かせません。役割や権限が曖昧なまま導入すると、既存の管理職と責任範囲が重なり、組織内で混乱が生じる可能性があります。
また、CxOが力を発揮するには、経営陣との信頼関係や社内の受け入れ体制が整っていることも重要です。導入前に十分な説明を行い、関係者間で期待する役割を共有することで、スムーズに機能しやすい環境をつくれます。
まとめ
エグゼクティブサーチの相談をする
CxOは財務・技術・人事などの専門分野を統括し、経営の質を高めるための重要な役職です。専門性を持つ責任者を配置することで、意思決定の精度が上がり、組織運営も効率化しやすくなります。
CxOの採用を成功させるには、自社の経営課題や事業戦略を明確にし、求める役割や人物像を整理することが欠かせません。また、必要に応じてエグゼクティブサーチ会社を活用することで、適したCxO候補と出会いやすくなります。
ロバート・ハーフは、外資系・日系グローバル企業を中心に、経営幹部・管理職クラスの採用支援に豊富な実績を持ちます。経営課題や組織フェーズに合わせて最適な人材を提案できる体制を整えており、エグゼクティブ層の採用も強みの一つです。採用活動のことでお困りでしたら、ぜひご相談ください。
■アドバイザー
アンドリュー・サイパス | エグゼクティブサーチ マネージングディレクター
人事、財務・会計、テクノロジー、セールス、マーケティング、オペレーション分野で、国内外のVPや経営幹部クラスの紹介実績を持つ。11年以上にわたるリテインサーチ経験を活かし、機密性の高いマーケットマッピングから変革を担うリーダーの紹介まで、採用における重要課題に対応。企業のストーリーやビジョンを深く理解し、候補者に丁寧に伝えるアプローチを行っている。