目次
- 内定通知書とは?
- 内定通知書と採用に関連する書類の違い
- 内定通知書に法的効力はある?
- 内定通知書を発行するメリット・デメリット
- 内定通知書の記載内容とテンプレート
- 内定通知書を作成する際のポイント
- 内定通知書を送るタイミング
- 内定通知書の送り方と注意点
- 【内定者向け】内定通知書を受け取った際の対応
- 【内定者向け】内定通知書のトラブル対応方法
- 内定通知書に関するよくある質問
- 転職・採用支援のプロにご相談ください
内定通知書は、企業と採用予定者の間で労働条件を明確にするために作成するのが好ましいです。テンプレートを活用しながら、一人ひとりの採用予定者に合わせて内容をカスタマイズすることで、内定承諾率の向上にもつながります。
本記事では、内定通知書の基本的な作り方から送り方、注意点までを丁寧に解説します。
内定通知書とは?
内定通知書とは、企業が採用予定者に対して採用の意志があることを正式に通知するための文書です。内定から1週間前後で、郵送やメールなどによって発行されます。通知書には、採用予定者の入社意志を確かめるための内定承諾書が同封され、返送を求める旨が書かれていることが一般的です。
書面で交付することで、採用予定者に入社意志を早めに固めてもらい、他社に流れるのを防ぐのにも有用な方法の一つとなります。また、労働条件の概要を任意で加えることもでき、採用予定者との認識のズレを防ぐにも有用です。
そもそも内定とは?
内定とは、企業が採用予定者に対して採用する意思を示し、それに対して採用予定者も入社する意思があると承認した状態を指します。企業が出した内定通知書に対する返事として、採用予定者が内定承諾書を送り受理されると、内定成立です。
内定は「始期付解約権留保付労働契約」とも呼ばれ、仕事の開始日は決まっているものの(始期付)、やむを得ない場合は解約できる(解約権留保付)状態を指します。これは、内定から実際の仕事の開始まで一定の期間があるためです。解約できるといっても、内定は法的には労働契約の成立とみなされるため、社会通念上相当と認められない限りは企業が内定を取り消すことはできません。
企業は内定通知書を発行する義務はある?
法律上、内定通知書を発行しなければならないという義務はありません。そのため、口頭で内定連絡を済ませる企業も存在します。しかし、採用する意志を書面ではっきり示すことで内定者は内定をもらったことが実感でき、入社意欲が高まる可能性があります。内定したかどうかの認識のズレを防ぐのにも役立ちます。
内定通知書と採用に関連する書類の違い
就職活動や転職活動を進める中で、内定通知書以外にも採用に関わるさまざまな書類があります。違いを見ていきましょう。
採用通知書
採用通知書は、内定通知書と同様に企業が採用予定者に対して採用する意志を通知する書類です。企業によっては「採用内定通知書」として発行しているところもあります。採用通知書の発行と同時に内定承諾書や入社承諾書の返送を求めることや、発行する義務がないことも、内定通知書との共通点です。
違いは、新卒の場合は「内定通知書」が多く、中途採用の場合は「採用通知書」が発行されることが多い点です。中途採用は採用決定から入社までの期間が短いためです。
内定承諾書
内定承諾書は、採用予定者が企業からの採用を正式に受け入れる意思を示す書類です。一般的に内定通知書に同封されており、内定承諾書が受理されると、企業と採用予定者の間で労働契約が成立したとみなされます。
労働条件通知書
労働条件通知書とは、企業が採用予定者や従業員に対して賃金や労働時間、休日などの労働条件を明示するための書類です。正社員、契約社員、アルバイトなど雇用形態に関係なく、すべての雇用者に発行されます。書面の他、メールなどでの交付も可能です。
内定通知書での労働条件の提示は任意であり、労働条件も簡潔にまとめられたものがほとんどですが、労働条件通知書は通知が義務付けられており、内容も詳細に書かれています。また、通知のタイミングも、内定通知書が企業が採用する意思を固めたときであるのに対し、労働条件通知書は従業員の入社日が基本で内定日の場合もあります。
雇用契約書
雇用契約書とは、賃金や労働時間などの労働条件がまとめられた書類です。発行されるタイミングも、労働条件通知書と同様に入社日か内定日であることが一般的です。労働条件通知書と異なり作成義務はありませんが、企業側と従業員の署名欄が設けられているため、労働条件に合意したことの証拠が残り、後のトラブル防止になります。
内定通知書に法的効力はある?
内定通知書には法的効力はありません。あくまで採用の意志を伝えるものであり、採用予定者の意思がまだ不明な状態のためです。しかし、採用予定者が内定承諾したことで成立する「内定」は法的効力を持ちます。法律でどのようなことが定められているのか見ていきましょう。
内定通知後の企業側の内定取り消しは違法行為
企業は原則として内定を一方的に取り消せません。これは、採用予定者が内定承諾した時点で、労働契約法第6条に基づき労働契約が成立しているからです。企業が内定を取り消すことは解雇と同様であり、社会通念上相当な理由がなければ違法行為となります。
社会通念上相当な理由とは以下のような場合を指します。
履歴書や職務経歴書に虚偽の記載があった
内定者が学校を卒業できず採用の前提条件を満たせなかった
内定後に内定者による重大な犯罪行為や不正行為が発覚した
健康上の理由で内定者の業務遂行が困難であると判断された
内定は企業と採用予定者の合意のもとに成り立つものです。内定取り消しの場合も、内定者からの合意が得られるよう努めるとよいでしょう。
内定者は内定承諾した後でも内定辞退は可能
内定者は内定承諾したあとでも内定を辞退することが可能です。民法第627条には「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する」と書かれています。つまり、無期雇用の場合は企業の同意なく辞めることができるのです。
解約の申入れの日から2週間後に内定辞退が成立するため、入社の2週間前までに伝えればよいことにはなりますが、企業側にも人員確保の都合があります。そのため、辞退する場合は早めに意思を伝えることが望ましいです。また、企業側も内定辞退が出ないように内定者のフォローが必要です。
内定通知書を発行するメリット・デメリット
内定通知書の発行には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
内定通知書を発行することで、企業側が採用の意思を出したことが明確になり、採用予定者との認識のズレを防げます。また、書面で通知することで、採用予定者は内定を受けたことが実感でき、安心します。
一方で企業側のデメリットとしては、内定通知書を作成する事務作業が増えることです。特に採用人数が多い企業では、大量の書類を用意する必要があるため手間がかかります。
メリット
| - 企業は採用の意思を正式に伝えられる
- 入社の意思確認を円滑に進められる
- 言った・言わないなどトラブルの防止につながる
- 採用予定者の安心感や信頼感を高められる
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デメリット
| - 企業は内定取り消しが難しくなる
- 書類作成や確認に手間がかかる
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内定通知書の記載内容とテンプレート
内定通知書に記載する内容を紹介します。記載すべき項目には特に決まりがないため、変更しても構いません。採用予定者に合わせたメッセージを加えると特別感が出て、従業員一人ひとりを大切にしている企業であることが伝わるでしょう。テンプレートはダウンロードが可能です。
内定通知書に記載すべき項目(同封書類ありの場合)
同封書類がある内定通知書では、採用する旨と、同封書類のことを簡潔にまとめます。記載すべき項目とテンプレートは、以下の通りです。
発行日
採用予定者の氏名
企業名と代表取締役の氏名
挨拶・応募に対するお礼
同封書類と提出期限
担当者の氏名と連絡先
内定通知書に記載すべき項目(簡易労働条件ありの場合)
労働条件通知書とは別に、内定通知書に労働条件を提示する方法もあります。主な労働条件にしぼり、簡潔にまとめます。「在籍学校を予定通り卒業できなかった場合は内定を取り消します」など、内定取り消し事由を加えるのも一例です。
発行日
採用予定者の氏名
企業名と代表取締役の氏名
挨拶・応募に対するお礼
労働条件(入社日、試験期間、勤務地、配属部署、業務内容、給与額、諸手当)
担当者の氏名と連絡先
内定通知書を作成する際のポイント
内定通知書は、企業と採用予定者の信頼関係を築く重要な書類です。トラブルを防ぎ、採用予定者が安心して入社準備を進められるように、以下のポイントを押さえておきましょう。
書類の提出期限・人事担当者の連絡先を必ず記載する
内定通知書には、採用予定者が返答すべき期限や提出すべき書類の提出期限を記載しましょう。提出期限の記載をしていれば、期限を過ぎても連絡がない場合に再度連絡を入れるなど、次の対応に進むことができます。また、採用予定者が疑問を感じたときにすぐに問い合わせできるよう、人事担当者の氏名・電話番号・メールアドレスなどの連絡先もあわせて明記しておくと安心です。
内容は明確・簡潔にまとめる
内定通知書は採用予定者が要点をつかみいやすいよう、できるだけ簡潔かつ明確にまとめましょう。強調したい部分を箇条書きにしたり、給与・勤務時間・勤務地などの労働条件を表にしたりするなど、視覚的に分かりやすくするのがポイントです。
会社印の押印は必須ではない
内定通知書は法的に義務付けられているものではないため、会社印の押印はなくても構いません。ただし、押印があることで書類としての信頼性が増し、採用予定者に安心感を与えることができます。
内定通知書を送るタイミング
内定通知書は、最終面接を終えて1週間から10日を目安に送付するのが一般的です。あまりに時間が空くと採用予定者を不安にさせてしまい、他社への就職を決めてしまう可能性もあるため、早めの対応が重要です。
なお、新卒採用においては、内定の通知を出すタイミングに制限があります。正式な内定通知は、原則として卒業・修了予定年度の「10月1日以降」に行うことになっています。
参考元:就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議
内定通知書の送り方と注意点
内定通知書が採用予定者に届かないといったトラブルが起きないためにも、内定通知書の送り方と注意点を確認しましょう。
内定通知書の見落としを防止するには?
内定通知書を送付したにもかかわらず、採用予定者からの反応がない場合は、見落としや未達が考えられます。メールで送った場合は、迷惑メールフォルダに振り分けられてしまったり、配送トラブルに遭ったりすることも考えられます。
そのため、最終面接の終わりに、内定通知書がいつごろどのような形で届くのかを伝えておくことが大切です。内定通知書の送付後には「内定通知をお送りしましたのでご確認ください」といったフォロー連絡を電話でするのもよいでしょう。メールの場合は件名を「【内定通知書送付のご連絡】株式会社〇〇」など一目で分かるようにタイトルを設定しておきます。
内定通知書は手渡ししてもいい?
内定通知書は、最終面接後に直接手渡すケースもあります。採用活動においてスピード感を重視する際に用いられ、採用予定者の反応を直接確認できるのがメリットです。入社意思はその場で確認することもあれば、後日郵送などで確認する場合もあります。
中には社長が自ら内定者の自宅に内定通知書を届けに行ったという事例もあり、内定辞退の防止にもつながったとのことです。
【内定者向け】内定通知書を受け取った際の対応
内定通知書を受け取った後は、内容を確認し、承諾または辞退の意思を明確に伝える必要があります。内定通知書を受け取った際の対応を紹介します。
内定を承諾するかどうか決める
内定承諾する前に、まずは内定通知書や同封の書類に記載されている内容を確認しましょう。入社日、勤務地、給与、雇用形態、業務内容など、重要な条件に記載抜けがないか、面接のときの内容と違いがないかチェックします。内容に疑問点がある場合は企業の担当者へ質問し、曖昧な点をクリアにしておく必要があります。
内定を承諾する場合
内定を承諾すると決めたら、企業に伝える方法を確認しましょう。郵送やメール、電話などがあります。転職エージェントを通じて応募した場合は、エージェントに連絡するのが基本です。企業に勝手に直接連絡するのは避けましょう。
また、内定承諾の期限も押さえておきます。郵送の場合は、消印か必着かによってもスケジュールが変わるので注意が必要です。やむを得ず期日までに返答できない場合は、その理由とともに人事担当者へ早めに相談することが大切です。
メールや電話で内定承諾をする場合の注意点は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【例文付き】内定承諾メールの送り方と注意点を解説
内定を辞退する場合
内定を辞退する場合は、丁寧かつ早めの連絡が基本です。辞退の連絡が遅れると、企業に迷惑がかかってしまいます。連絡方法は、電話が一番望ましいです。
電話で担当者につながらなかった場合は、メールで連絡します。「お電話しましたが、お忙しいようでしたのでメールで失礼いたします」と電話した旨も書きます。メールは履歴が残るため、忙しい採用担当者にとってもメリットです。電話が通じた際にもメールを併せて送ってもよいでしょう。
電話でもメールでも、内定をもらったことへの感謝の言葉を添えることが大切です。辞退理由は無理に詳しく述べる必要はありません。早朝や深夜、忙しいと思われる時間帯を避けるなど、連絡する時間帯にも気をつけましょう。
【内定者向け】内定通知書のトラブル対応方法
内定通知書は、郵送事故で届かなかったり、誤って紛失してしまったりするケースもあります。トラブルに対処する方法を紹介します。
内定通知書そのものがない
企業によっては、内定の連絡を口頭で済ませることがあり、内定通知書を発行しないケースも存在します。入社条件や待遇に関する誤解やトラブルを防ぐためにも、可能であれば文書での通知を受けておくことが望ましいですが、発行は義務ではないためなくても問題はありません。
労働契約が成立するのは内定を承諾した後です。内定通知書がない場合は、企業の担当者に内定承諾の方法を確認してください。
内定通知書が届かない
企業から内定通知書を送ると連絡があったのに、数日たっても届かない場合は、まず郵送トラブルや宛先の誤りなどが考えられます。1週間以上経過しても届かない場合は、早めに企業に連絡を取り、状況を確認しましょう。
住所の誤記や郵送事故の可能性もあるため、自分の住所情報を再確認し、必要があれば再送を依頼します。メールやPDF形式での提供など、代替手段を提案してもよいでしょう。
内定通知書を紛失した
うっかり内定通知書を紛失してしまった場合でも、焦らずに対応しましょう。まずは企業の人事担当者に連絡し、紛失してしまったことを正直に伝えます。その際、「再発行をお願いできますでしょうか」と丁寧に依頼しましょう。
郵送やメールなど、どのように再送されるかを確認しておきます。届いた書類はすぐにデジタルで保管するか、コピーを取っておくと安心です。
内定通知書に関するよくある質問
内定通知書に関するよくある質問を紹介します。
内定通知書を受け取った後で、労働条件や待遇の交渉はできる?
内定通知書を受け取った後であっても、労働条件や待遇に不明点があれば、確認や相談は可能です。ただし、交渉の仕方には注意が必要です。給与や勤務時間などの条件に納得がいかない場合でも、企業側に配慮した形で伝えることが大切です。
交渉の余地があるかどうかは企業によって異なるため、断られる可能性も念頭に置くとよいでしょう。
内定通知書の再発行はお願いしてもいい?
内定通知書を紛失した場合、企業に再発行をお願いしても問題ありません。早めに行うことが重要なため、まずは電話で直接依頼しましょう。電話が通じなかった場合は、メールを送ります。「お手数おかけして申し訳ありません」と謝罪の言葉も併せて伝え、丁寧な態度で接することが大切です。
内定承諾率を上げるための内定通知や内定通知書のコツは?
内定承諾率を上げるには、まず内定通知をできるだけ早く出すことが基本です。最終面接から時間が空くと、候補者の気持ちが離れたり、他社に流れたりする可能性があります。また、通知内容は機械的なテンプレートではなく、採用予定者に合わせた個別のメッセージを添えることで、従業員の一員として歓迎する思いがより伝わるでしょう。
内定承諾後であっても候補者が辞退するケースはあります。そのため、承諾をもらったあとも油断せず、定期的に連絡を取り合いましょう。入社前の不安や疑問を丁寧に解消することで、信頼関係が築かれ、最終的な入社につながりやすくなります。
契約社員でも内定通知書は発行した方がいい?
契約社員であっても、内定通知書はできる限り発行した方がよいです。書面で通知することで、双方の採用不採用の認識の違いを防ぐことができます。
また、企業と採用予定者との心理的な距離を縮めることも、内定通知書の役割の一つです。企業側が新しい従業員を受け入れるための、いわば歓迎メッセージとして捉えることもできます。発行すれば採用予定者は採用されることが分かるだけでなく、採用された達成感や企業からの信頼を感じることもできるでしょう。
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内定通知書は、採用の意思を採用予定者に正式に伝える重要な書類です。採用予定者にとっても、採用されることが書面ではっきり示されることで安心して入社を検討できます。テンプレートや雛形を活用しながら、採用予定者一人ひとりに合わせてカスタマイズしましょう。
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