ビジネスアナリストとは?仕事内容や年収、役立つ資格を解説

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近年、DX化の推進により、ビジネスアナリストが注目されています。ビジネスアナリストは、プロジェクト全体の方向性を決める上で、欠かせない職種です。 本記事では、ビジネスアナリストの仕事内容や年収、役立つ資格、必要なスキルなどを徹底解説しています。ビジネスアナリストを目指している人や転職を考えている人は、ぜひ参考にしてください。
日本におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みは進んでいます。 上記のグラフを見てわかるように、「全社戦略に基づき、全社的にDXに取組んでいる」と回答した日本国内の企業の割合は、2021年度から2023年度にかけて年々上がっているのがわかります。 ビッグデータ、AI、IoTなどの新技術が注目されることで、ビジネスアナリストを必要とする場面も自ずと増えていくでしょう。そのため、ビジネスアナリストは将来的にも需要があるといえます。 ロバート・ハーフ・ジャパンの業務改革部門のディビジョン・ディレクターのOskar Takenakaさんは、「ビジネスアナリストの役割は10年以上前から日本でも注目されていましたが、欧米と比べて役割が認知されていません。今後は企業内でビジネスアナリストの必要性を認知し、育成することが大切です」と述べています。 出典:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2024」
ビジネスアナリストという職種は、2000年前後から欧米で普及しており、今では専門職の1つとして認知されています。 日本においては、2009年にビジネスアナリシスのナレッジ集である「BABOK®」が日本語版で刊行され、徐々に認知度が高まってきました。 近年では、クライアントニーズの多様化やIT技術の進化などにより、企業ごとに個別化されたサービスの提供が求められるようになりました。また、新型コロナウイルスの蔓延や自然災害による働き方の変化など、企業を取り巻く環境は不透明な状態です。そんな中、企業の業務内容や市場分析をし、効果的な施策を提案するビジネスアナリストの存在は大きく、需要が高くなっています。
ビジネスアナリストは、業務分析(ビジネスアナリシス)の専門家です。クライアントの課題解決に向けて、社内外のデータを分析します。 まず、クライアント企業から経営状況や業務内容を聞き取り、それを分析して課題を洗い出します。そのあと、どのようなITシステムを構築したら課題解決につながるか、プログラマーなど各専門家に伝達します。ビジネスアナリストは、クライアントとクライアントの要望を形にする専門家との間に立つ、いわば橋渡し役のようなものです。 ビジネスアナリストという職種は日本国内ではまだあまり確立されていないものの、業務自体は以前から存在しました。また、従来はビジネス分野に特化していましたが、近年はDX化が広がり、IT技術の活用による課題解決の提案が増えています。
ビジネスアナリストもコンサルタントも、クライアントへのヒアリングや市場分析を基に課題と解決案を設定する点は同じです。 相違点は、ビジネスアナリストのほうがエンジニアなどのシステム開発者との接点が多いことです。システムの詳細設定などの要件定義が業務に含まれており、エンジニアはその要件定義を基にシステムの設計と開発を行います。 一方のコンサルタントは、よりクライアントとの接点が多いことが特徴です。主な業務はプロジェクト全体の方向性を決めることで、要件定義は行いません。 プロジェクト計画に沿って要件定義が設定されるため、コンサルティングファームでは、ビジネスアナリストが下位の職位となり、知識や経験を積んだ後にコンサルタントとして昇格するのが一般的です。
プロジェクトマネージャーは、プロジェクトチームの責任者であり、プロジェクト全体をまとめる役割です。ビジネスアナリストが推奨したソリューションを提供するために、プロジェクトの計画作成、スケジュール管理、進捗状況や課題の報告など幅広く担当します。 そのため、プロジェクトマネージャーとビジネスアナリストは、プロジェクトに関わる範囲が異なります。プロジェクトマネージャーは要件定義から設計・開発、運用・保守まで関わり、システムが問題なく稼働するか確認します。一方のビジネスアナリストは、クライアントにヒアリングし要件定義をまとめるまでが主な業務です。 プロジェクトマネージャーについては、以下の記事で詳しく紹介していますでの、気になる人はご参照ください。
先に述べたようにビジネスアナリストは、ビジネスアナリシス(業務分析)の専門家です。国際的なビジネスアナリシスの団体であるIIBA®は、ビジネスアナリシスを以下のように定義しています。 「ビジネスアナリシスはニーズを定義し、ステークホルダーに価値を提供するソリューションを推奨することにより、エンタープライズにチェンジを引き起こすことを可能にする。」 引用元:ビジネスアナリシス標準 つまりビジネスアナリストは、クライアントのニーズを見出し解決策を提案することで、クライアント企業にプラスの変化を起こす役割があります。 クライアントは、ITの知識や企業にとって必要なものをはっきりと把握しているとは限りません。そこでビジネスアナリストがクライアントから話を聞き出し、ITシステムを活用した解決案を出します。 クライアントからヒアリングした情報を、システム開発担当やプロジェクトマネージャーなど関係各所へ伝達することもビジネスアナリストの仕事です。クライアントの要望やITシステムの開発・構築に必要なものを、要件定義として整理します。それを基に、プロジェクトマネージャーがプロジェクトチームを編成し、担当を割り振ります。割り振られたエンジニアが、実際にシステム開発をするという流れです。
ビジネスアナリストは7つの種類に分かれています。それぞれについて見ていきましょう。
ビジネス・システム・アナリストは、クライアントから経営状況などをヒアリングを分析し、ビジネスシステムの導入計画を策定するのが役割です。ビジネスシステムとは、顧客管理や販売管理など業務を効率的に処理できるシステムのことです。既存のビジネスシステムを分析し、より適したシステムの導入を提案し、課題解決につなげます。
ファンクショナル・ビジネスアナリストは、特定の業務システムの見直しが主な役割です。システムを文書化し、業務の効率化に適しているかチェックします。ビジネス・システム・アナリストのようにITシステムの見直しだけでなく、業務分担のしかたやアウトソーシングなどの見直しなどにも携わります。
プロダクト・アナリストは、ユーザーのニーズなどを分析し製品開発につなげます。デジタルや社員の強みが活かせているか、パフォーマンス評価も行いながら製品・サービスの改善策を設計します。
エンタープライズ・ビジネスアナリストは、CoEのような部門横断的な組織に所属し、社内の部門横断的な課題に対応するのが役割です。部門間でどのようにコミュニケーションを取っているか、情報を共有できているかなどを分析し、部門をまたいだ同じ目標に向かってスムーズなやりとりができるよう支援します。
ビジネスアーキテクトは、ビジネスプロセスの全体構造を分析しプロセスを構築する役割を担っています。企業の規模や事業内容を踏まえ、経営目標のためにDX化を推進するなど、解決策を導き出します。新規事業を興す際にも、必要とされる職種です。ビジネスアーキテクトは経営者の直下に配置されるため経営寄りなのに対して、ビジネスアナリストは各部門とやりとりする管理職に近い役割を持っています。
ビジネス・インテリジェンス・アナリストは、社内外の膨大なデータを分析し、経営戦略や意思決定をサポートするのが役割です。BI(ビジネス・インテリジェンス)とは、社内のデータ分析により意思決定を支援することですが、近年は市場分析など社外データも分析も対象となります。
ハイブリット・ビジネスアナリストは、分析だけでなく問題解決の実行までを担うアナリストです。ビジネスアナリストはシステム開発はエンジニアに任せますが、ハイブリット・ビジネスアナリストはRPAなど事業プロセスを自動化できるツールを活用することで、システムの実装まで関わります。
ロバート・ハーフの自社データでは、ビジネスアナリストの平均年収は650万〜1,050万円です。経験やスキルを身につけていけば、平均年収が1,000万円を超えてきます。 以下に関連職種の平均年収もご紹介しますので、参考にしてみてください。 給与水準や採用市場に関する最新動向や、転職情報に役立つ情報をまとめた「2024年版 年収ガイド」もぜひ参考にしてください。

職種

経験値が浅い場合

平均的な経験値の場合

優れた経験値がある場合

アプリケーションマネージャー

850万円

1,050万円

1,250万円

ビジネスリレーションシップマネージャー(BRM)

1,050万円

1,350万円

1,650万円

アーキテクト(アプリケーション、ソリューション、システム、インフラ、エンタープライズ)

1,050万円

1,400万円

1,800万円

IT監査/ITリスクスペシャリスト

600万円

800万円

1,050万円

ITディレクター/最高情報責任者(CIO)/最高技術責任者(CTO)

1,600万円

2,200万円

2,600万円

ITガバナンススペシャリスト

750万円

950万円

1,150万円

IT戦略/計画/コンサルティング

850万円

1,050万円

1,250万円

ネットワーク & サーバーサポート/エンジニア

650万円

850万円

1,050万円

プログラムマネージャー/ディレクター

1,250万円

1,450万円

1,650万円

サービスデリバリーマネージャー

1,050万円

1,250万円

1,450万円

ビジネスアナリストの具体的な求人例を紹介します。

職種

ITビジネスアナリスト

想定年収

800万円~1,100万円

職務内容

  • 商品・サービス企画をサポートするITソリューション開発の主要窓口となる。
  • 製品部門、営業部門、業務部門と協力し、新製品や新サービスのITソリューションを提案する。
  • リリース後のプロダクトオーナーとして、ビジネス部門からのフィードバックを評価し、プロジェクトのKPIを確実に達成する。
  • ビジネス部門とITチームの両方からの製品改善要求を管理し、バックログ項目として整理する。
  • ステークホルダーとのコミュニケーションをリードし、バックログ項目に優先順位を付け、製品/サービスの価値を高め、ビジネスの成長を促進するためのアクションプランを策定する。
  • ステークホルダーと協力し、新しいイニシアティブのITビジネスケースを作成し、スコープと実行計画を定義し、プロジェクト実行の承認を得る。
  • ITデリバリーチームリーダー、UXチーム、データサイエンスチームと協力し、要件を確定し、アーキテクチャとソリューションの方向性を調整する。

応募資格

  • 部門横断的なシステムビジネス分析の経験
  • エンドユーザーおよびデータドリブンな考え方
  • プレゼンテーション能力
  • 論理的思考と問題解決能力
  • 日本語 ネイティブレベル / 英語: 中級レベル
  • IT基幹システムプロジェクト(ERP、勘定系システム等)の経験者

勤務地

東京23区

ビジネスアナリストに必要なスキルを紹介します。
ビジネスアナリストは、クライアントからヒアリングし、分析したことを関係各所へ伝達する役割を担っています。年齢や立場が異なるさまざまな関係者と良好な関係を築く、コミュニケーションスキルが必要です。コミュニケーションスキルは、話すことの他、相手の要望をくみとったり文章にまとめたりする力も含まれています。 クライアントを含め、各関係者との信頼構築が重要です。クライアントとシステム開発者の意見が合わないときも、冷静に両者の意見を聞き、判断を下します。決断した過程など説明を重ねたり、複数の解決策を提案したりして、反対意見側にも納得してもらえるよう努めることが大切です。
ビジネスアナリストは、クライアントに最適なソリューションを提案することが重要です。そのためには、多くのデータを読み取り、正確に情報を分析するスキルが必要です。 例えば、会社のWebサイトが十分なアクセス数を得られていない場合、Webサイトのトラフィックに関するデータを集め、分析し問題を特定します。根源となる原因を突き止めるためにも、市場動向など外部要因も取り入れながら多角的な視点で考え、分析スキルを高めましょう。
ビジネスアナリストは、分析したデータを基に、クライアントの問題に対する解決策を講じる必要があります。 Webサイトの再設計が必要なのか、キャンペーンの内容を見直したほうがいいのかなど、適切な解決策を見つけなればなりません。ITツールを幅広く知っておくと、解決策の選択肢が広がります。
ビジネスアナリストの仕事で役立つ資格は「ECBA」「CCBA」「CBAP」の3つです。この3つの資格は、国際的なビジネスアナリシスの団体であるIIBA®が提供しており、オンラインで試験を受けることも可能です。それぞれについて見ていきましょう。
ECBA™は、ビジネスアナリシスについてのスキル、知識、行動の基礎を認定する資格で、初級クラスにあたります。これからビジネスアナリストを目指す人におすすめです。 ECBAは、受験条件がないため、実務経験のない人でも受験できます。ビジネスアナリシスの知識体系のBABOK®ガイドや試験対策講座を活用して学習しましょう。
CCBA®は、ビジネスアナリストとして2~3年の実務経験がある人に適しており、ビジネスアナリシスの専門知識を認定する中級クラスの資格です。 CCBAを受験するには、以下の4つの条件を満たす必要があります。 過去7年間において、ビジネスアナリストとしての実務経験が3,750時間以上ある BABOK®ガイドで定める6つのナレッジエリアのうち、2つ以上が各900時間以上、もしくは4つ以上が各500時間以上の経験がある 過去4年以内に21時間以上の専門能力に関する教育を受けている 上司、クライアント、CBAP資格保有者いずれかによる推薦状がある CCBAから受験資格のハードルが高くなり、細かく条件が指定されているのが特徴です。そのため、CCBAを取得できれば、大規模で複雑なプロジェクトでも引き受けられる能力が証明されます。公式ページに試験のサンプルがあるので、挑戦してみましょう。
CBAP®は、ビジネスアナリストとして5年以上の実務経験がある人向けの上級クラスの資格です。ビジネスアナリシスの豊富な知識と経験を認定します。 CBAPを受験するには、以下の4つの条件を満たす必要があります。 過去10年間において、ビジネスアナリストとしての実務経験が7,500時間以上あるBABOK®ガイドで定める6つのナレッジエリアのうち、4つ以上が各900時間以上の経験があり、7,500時間以上の実務経験のうち、合計3,600時間以上を占めている過去4年以内に35時間以上の専門能力に関する教育を受けている上司、クライアント、CBAP資格保有者いずれかによる推薦状が2通ある CCBAと同様に、試験のサンプルが公式ページに掲載されています。難易度については公表されていませんが、2024年7月31日時点でのCBAP資格保持者は、2万1,020名です。
ビジネスアナリストに向いている人は、以下のような特徴があります。
ビジネスアナリストは正確に分析する能力が必要です。万が一分析結果が間違っていれば、企業活動にも影響を及ぼします。分析ツールを使いこなすだけでなく、どのデータとデータを組み合わせたら必要な情報を抽出できるか見極めるスキルもあると良いでしょう。
ビジネスアナリストは、クライアントの課題を解決するために、最適な解決策を提案する必要があります。解決策を提案するときは、クライアントが納得するよう根拠に基づいて論理的にわかりやすく説明します。システムの機能、コスト、クライアントの経営状況など、多面的な視点での思考が求められます。
クライアントへ最適な提案をするためには、システムや社会情勢など常に新しい知識を身につけなければなりません。ITへの関心が高く学ぶ意欲のある人は、ビジネスアナリストに向いているでしょう。
ビジネスアナリストは、関係各所と連携を取りながら仕事を進めます。コミュニケーションを取る機会が多いため、人と接することが苦にならない人が向いているでしょう。話すことが得意ではなくても、相手の話を聞き取り内容の確認を怠らない人は、コミュニケーション能力があるといえます。要件定義の作成にも関わるため、他の人が読んでもわかるよう文章でまとめる力もあると良いです。
ビジネスアナリストになるには、ビジネスに関する知識や経験・実績、分析スキルなどを身につける必要があります。 マーケティングに関する基礎知識や経験を身につけるためには、経営企画部や社内DX推進などの部署で経験を積むことが方法の1つです。経営にあたってどのような課題と解決策があるのか、多くの事例を知っておくと良いでしょう。 また、データ分析のスキルも必須です。多様な分析ツールを知り、実際に使ってみることでどのような課題の分析に適しているか見極めます。顧客管理や在庫管理など、業務関連のITツールについての知識も、解決策の提案の際に活かせます。ECBAなど資格の取得にも挑戦し、実務レベルで通用するスキルと知識を身につけましょう。 スムーズに転職したい人は、転職エージェントを活用してみましょう。
ビジネスアナリストのキャリアパスとしては、次のようなポジションが考えられます。
ビジネスアナリストとして経験・実績を積み上げれば、シニアビジネスアナリストとして、ビジネスアナリストチームを引っ張っていくことも可能です。 プロジェクトマネージャーと協力しながら、プロジェクトが順調に進んでいるか確認したり、問題が発生したら対処したりします。また、他のビジネスアナリストの指導役としての役割も期待されるでしょう。最終的にアナリストのエキスパートになる選択肢もあります。
リーダーシップのある人は、プロジェクト全体をまとめ上げるプロジェクトマネージャーがおすすめです。 ビジネスアナリストはプロジェクトの初めの部分にしか関わらないことがほとんどですが、プロジェクトマネージャーはプロジェクトの立ち上げから完了まで一貫して管理するポジションです。システムが実際に稼働しどのような効果が出るか、現場から把握できます。問題が発生した場合は対応し、関係者に指示を出したり説明を行ったりします。
クライアントとの交渉やプロジェクト全体の方向性決めに関わりたい人には、ビジネスコンサルタントになる道があります。ビジネスアナリストよりも上流工程(前の段階)に関わる職種です。 ビジネスアナリストはシステムの要件定義を作成しますが、ビジネスコンサルタントはシステムの提案に留まります。またクライアントの社内データよりは市場調査など外部の動きを重視し、競合よりもクライアントが優位になるよう導いていきます。システム構築のような技術的なことよりも、マーケティング力が必要となるでしょう。 また、ビジネスコンサルタントの会社を起業したり、フリーランスとして活躍するキャリアパスもあります。どちらも自分の力量に左右されるため、挑戦志向の強い人におすすめです。
ビジネスアナリストは、将来的にも需要のある職種です。DXの推進にともない、日本でも注目される頻度が高くなっています。ビジネスアナリストとして活躍するには、コミュニケーションスキルやデータ分析スキルが必要です。 ECBAやCCBAなどの資格取得を目指し、知識や経験を身につけていきましょう。ビジネスアナリストの求人は、外資系企業や大手企業によく見られます。 ロバート・ハーフでは、外資系・日系グローバル企業への転職を支援しています。IT関連など専門性の高い仕事をお探しなら、ぜひご利用ください。