日本では現在、スキル不足の問題が深刻化しています。東京では、候補者1人につき、2件以上の求人広告が出ている売り手市場の状況が続いています。

スキルがある人にはたくさんのキャリア機会が次々と与えられる現在、企業は、人材獲競争に勝ち、社内の最も優秀な人材の流出を食い止める強固な雇用維持戦略を必要としています。

従来の日本では長期雇用が当たり前でした。しかし現在のスキル不足が、今、企業における雇用維持戦略の考え方を変えつつあります。生産力喪失、職場モラールの低下、採用コストの増加は、従業員の転職がもたらす落とし穴のごく一部にすぎません。

積極的な雇用維持戦略を設けることで、日本の企業には、現在の状況を逆転し、優れたスキルを持つ人材を味方につけるチャンスが生まれます。そこで今回は、従業員の離職を防止する5つの対策をご紹介します。

1. 日々のコミュニケーションを大切にして離職を防止

現在のビジネス界は、Eメールに依存しており、時折顔を合わせる程度のコミュニケーションで物事が進んでいく便利な世の中です。Eメールがあれば仕事は遂行できるかもしれません。しかしマネージャーは、部下の適性と職務に対するモチベーションを深く理解するために、日常的に部下一人ひとりと直接的なコミュニケーションをはかることが必要です。定期的に双方向性のフィードバックを得るには、一貫性のあるコミュニケーションが効果的です。従業員エンゲージメントの維持にも役立ちます。

Goodyear Japan社で財務担当ディレクターを務めるジャスティン・チューロチャス氏は、従業員との直接的かつ個人的な関係構築が、離職防止に大きく役立つと言います。

チームメンバーとの日々のやり取りが最も重要です。」「「1対1で話す機会を設け、既存のミーティング時間とは別に、定期的に個別のコミュニケーションをはかることが従業員のニーズや悩みに対する理解を深め、日々の勤務状況を知ることに役立ちます。」と同氏は説明します。

2. 従業員に力を与える

仕事への深い関与を維持するには、従業員に目的意識を持たせること、そして目標に向かって努力し、企業に対する自らの貢献を実感させることが必要です。

メットライフ生命保険の執行役専務、最高財務責任者のニコラス・ウォルターズ氏は、次のように言っています。

「マネージャーは、部下には価値があるということを示す必要があります。当事者意識、権限付与、そして主体的な決断能力を与えることが大切です。職務に対する従業員の貢献が、企業の利益につながる様子を理解できるように手助けすべきです。」

3. 褒めて報いる。その方法は給与以外にも

競争の激しい市場において、企業には物事の先を見越してアクションを起こすことが求められます。給与が重要な戦略の一部であることは今後も変わりありませんが、非金銭的な特典を用いて従業員のやる気を高めることが、転職防止に大きく役立ちます。

インセンティブとしては、柔軟性のある働き方がますます高い支持を集めています。例えば、働く親として帰宅時間を早めて子どもとの時間を大切にしたいと考える従業員や、家族を介護しつつ、時折自宅で仕事をする必要がある専門職者などは、柔軟性のある働き方を認めてくれる企業により高い忠誠心を持ちつづけることでしょう。

非金銭的なその他の特典には、以下のようなものがあります。

  • 研修または新規プロジェクトの機会
  • グローバルな職務に付随する海外出張または海外赴任
  • 余暇および生活面での福利厚生の充実(例:ジムの会員資格など)

4. ロバート・ハーフ給与ガイドをダウンロード

キャリア志向の専門職者であれば、継続的な自己研鑽がキャリア成功の要であることを知っています。教育研修または、実地研修を通して新たなスキル習得の機会を提供することが大切です。

チューロチャス氏は「技能不足が深刻さを増すにつれ、従業員に投資しない企業は、自発的な離職の増加に見舞われるでしょう。」と補足します。

5. 一時雇用者への考えを改める

矛盾すると思われるかもしれませんが、派遣や臨時の社員をヘッドカウントに含める体制への移行が自発的な離職の防止につながることもあります。派遣や臨時の社によって新たな考え方と熱意がもたらされ、繁忙期の事業拡大と、閑散期における企業のスリム化の維持を可能にします。これにより実質的な価値が高まる上、生産力を上げることができ、従業員がモラールが向上します。

ウォルターズ氏は「臨時社員は当社の労働力として実に重要です。プロジェクトや極めて重要なサービスの実現やプロジェクトにおいて特定の技能を投入するなど、一時雇用によってもたらされる価値はたくさんあります。」とコメントしています。

日本において企業がスキル不足危機を解決する道のりは決して簡単なものではなく、多角的なアプローチを要します。しかしながら、雇用維持戦略に、さらなる柔軟な対策を講じれば、優れた人材をつなぎとめる適切な方向性を確保できるはずです。